【開催レポート】at Will Work主催オンラインセミナー「withコロナ / after コロナフェー ズの働き方改革〜ニューノーマルにおける人材育成について〜」
先日、9月2日に、第二回 at Will Work主催オンラインセミナーを行いました。
第二回のテーマは「withコロナ / after コロナフェーズの働き方改革〜ニューノーマルにおける人材育成について〜」。
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によって企業の研修、教育のあり方は大きく変わっています。また、近年社会人の学び直しの時間が減ってきており、その環境を会社が用意すべきと言われています。その中で注目されているのが、社員の「レンタル移籍」。数年前から注目され、現在はオンラインに対応しながら人材の成長の機会を提供しています。
今回は、レンタル移籍事業を手掛ける
株式会社ローンディール 代表取締役社長 原田 未来氏
をお迎えし「レンタル移籍」についてお話を伺うとともに、
第一回でもご登壇頂いた
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 アソシエイトディレクター田中 公康氏
をゲストとしてお迎えし、
・ニューノーマルにおける人材育成について、個人・企業の観点からどう考えるのか?
・withコロナ/ afterコロナのフェーズでは何をすべきか?
の話題についてトークセッションを行いました。
働き手に求められるリスキル
現代、外部変化の激しい時代の中で、働き手の学び直しが必要であると言われています。今年のダボス会議でも、この話題が取り上げられました。忙しい現代人の自己研鑽の時間は近年減っているという結果も出ています。そういった中で、経団連は、「働き手の自己実現や自己研鑽、成長の機会を企業が提供するべき」と発表しました。
しかし、企業も学び直しの機会が必要だと理解しながらも実現できていない、理想と現実のギャップがあります。そのような中で、企業はどのように働き手に学び直しの機会を提供すれば良いのでしょうか?レンタル移籍を題材にそのヒントを紐解きます。
そもそもレンタル移籍事業とは?
大学卒業後、二社に勤めた原田氏。長年同じ会社に勤め、仕事をこなせるようになった頃、自分の実力を会社以外で試してみたいと感じ始めました。しかし、従来の選択肢の中では、転職という方法しかありません。長年勤めた愛着のある会社を離れずに、外部で自分の力を試す機会があればと、独立し、レンタル移籍事業を始めました。
レンタル移籍とは、大企業の人材育成として、社員をベンチャー企業に12ヶ月間移籍させ、事業の立ち上げなどを体系的に学ぶ新しい人材教育の仕組みです。
RICOH社やTOYOTA社などの有名企業も導入しており、現在までに導入企業38社、計105名の導入実績があります。
ローンディール社のミッションは、「日本的な人材の流動を創出する」。長期的な信頼関係を前提に採用するなど、日本独特の雇用の仕方の良さを活かしながら、日本的な人材の流動創出を目指しています。
数年間やってわかった成果や課題は?
・タレントエコシステムのニーズの高まりによる企業の変化
レンタル移籍事業を開始して5年。様々な社会変化が起こる中で、レンタル移籍の企業のニーズはこの5年間で大きく変わったと言います。
原田氏:5年前はオープンイノベーションの目的で、経営企画部からの依頼がほとんどでした。しかしこの数年で、依頼者が経営企画部から人事部に変わってきています。
その理由として、イノベーション課題自体が経営企画から人事部に移っているのではないかと思います。
従来、大企業はしっかりした教育環境を持っていますが、それはあくまで既存の事業のオペレーション教育です。この環境変化の激しい中で社内にイノベーション人材が育っていないということに企業が気付き始めたのだと思います。
今までの人材育成施策とは違う、全く新しい仕組みのレンタル移籍。レンタル移籍のようなモデルが注目を集める背景について、タレントエコシステムのニーズの高まりが関係していると田中氏は述べます。
田中氏:組織のあり方は非常に多様になってきています。
従来の組織は、目的に対して効率的に正確に組織全体を動かすには向いていますが、環境変化が激しい中ではスピード感が落ちる、柔軟な対応がやり難いというデメリットがあります。
今求められているのは、様々な環境変化に対して、自律的に対応できる人やチームです。
昔は若い時に蓄積したノウハウや知見、ナレッジの賞味期限が長かったので、それを頼りにキャリアをある程度歩めことができました。しかしながら、デジタルトランスフォメーションの必要性などが叫ばれる昨今、テクノロジーの進化や環境変化がますます激しくなるなか、過去の知見や経験だけでは企業も個人も生き残れない時代になってきました。
・他の教育施策との違いは?
自律的に対応できる人材を育てるため、まさに体系的な実践を重視するレンタル移籍。原田氏は、リアルな場だからこそ得られるものがあると言います。
原田氏:レンタル移籍は座学の研修とは全く違い、本気で事業に向き合わないといけない場です。そのため、レンタル移籍者のマインドセットが非常に大切になります。座学とセットで研修を行い、学んだことをレンタル移籍先で実践するなど、体験的にまた知識的に両面で研修を行う企業もあります。
また、実際に他企業の業務を担当するリアルな場だからこそ、マッチングの仕方にもこだわっています。
特に、会社に言われたからではなく、コミットメントできると自分で決定することをポリシーにしています。
・レンタル移籍の事例
企業文化も大きく違う中で、大企業ではなかなか任されないようなベンチャー企業ならではの業務を行うこともあるとのこと。
原田氏:ロボットを制作しているベンチャー企業へレンタル移籍したパナソニックの研究者は、「50億資金調達せよ」というミッションを与えられました。
もちろん、現職は研究者なので資金調達は未経験。資金調達について投資家に話を聞いたり、調べたりして、知識を得ながら業務を行なっていくという経験をしました。壁にぶつかりながらも、結果的に数億円を調達していました。
このような、ベンチャー企業ならではの業務の振られ方も大企業と違う文化の一つ。
レンタル移籍で得られた成長の角度は、簡単には戻らないため、数年後に自社で活躍する人材が多く出てくるだろうと原田氏は予測しています。
・今後の人材戦略の変化は?
また田中氏は、外部からの人材の採用に加え、レンタル移籍などの仕組みを利用した自社人材の育成など、今後企業の人材戦略はより多様化していくと言います。
田中氏:大企業で結果を残そうと思うと、長く勤めていて社内人脈があり、社内ルールを理解した上でどうしたら組織が動くかがわかっている方が有利です。一方で、ベンチャー企業だとスピード感や固定概念に捉われないなどの良さがあります。お互いの強みを活かしながら、どうフォーメーションを作るのかが大切です。
そこには社内人材だけでなく、社外の人材を混ぜたり、レンタル移籍で来ている人を混ぜるというようなことも大事だと思います。
コロナ禍を経て変わったこと、今後に期待できそうなこと
最後に、海外研修や集団研修など従来の人材育成ができない現状で、育成の仕方はどうなっていくのかについて伺いました。
両者共に、今後変化の激しい時代だからこそ、企業がイノベーション人材を育てる機会を増やしていかなければいけないと考えを述べました。
原田氏:コロナにより人材教育の選択肢が狭まり、企業が提供する成長機会は資源として減ってしまっています。私はこのような状況の中で、企業側が人材の流動性を高めないといけないと感じています。このタイミングで副業を解禁した企業もあるほど、人の流動性を担保しないと経営リスクになると企業が気付き始めています。
田中氏:デジタル化で社会が急激に変化している中で、時代に合わせた形にビジネスプランを新規に策定したり・変更することはできても、実行できる人(Doer)がいないということが課題になっています。
新しいビジネスプランを実現するためには、社員が新しい能力やスキル・マインドセットを身につけていかないといけません。そうした時に企業戦略という意味合いでも、企業が教育に投資する必要があると思っています。
まとめ
この変化の激しい時代には、ビジネスモデルの柔軟な変革が必要です。そのためには、その変化に柔軟に対応できるイノベーション人材を育てることが企業の鍵であるということが印象に残りました。
withコロナ / after コロナ時代だからこそ、今後はレンタル移籍のようなイノベーション人材を育成できる仕組みの需要が高まっていきそうです。