最新のお知らせ イベント 2022.05.19

【開催レポート】どうなる、働き方?非財務情報における人的資本マネジメント

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2022年4月4日、4月11日にat Will Work主催のオンラインセミナー 『どうなる、働き方?非財務情報における人的資本マネジメント』を配信しました。

Vol.5のテーマはどうなる、働き方?非財務情報における人的資本マネジメントVol.1で開催した「人材政策」の続編となります。

▼Vol.1のレポート記事はこちらから

・at Will Work主催オンラインセミナー 「人材政策」持続的企業価値を創造する人的資本経営に向けて(前半)

https://www.atwill.work/information/onlineseminar_200528_1/

・at Will Work主催オンラインセミナー 「人材政策」持続的企業価値を創造する人的資本経営に向けて(後半)

https://www.atwill.work/information/onlineseminar_200528_2/

近年、グローバル化、デジタル化、少子高齢化など企業を取り巻く環境は加速化しています。企業が事業環境の変化に対応しながら、持続的に企業価値を高めていくためには、経営戦略と適合的な人材戦略が重要となります。人的資本経営の実現に向けた日本企業の取り組みを一層後押しする観点から、経済産業省では人材版伊藤レポート2.0」を作成

そこで、本セミナーでは、人的資本経営に関する調査」の結果を含め、人的資本経営の推進に関する政策について、経済産業省 経済産業政策局 産業人材課 片岸 雅啓 氏にお伺いしながら、

・「新しい資本主義」における、非財務情報と人的資本の意義、重要性

・グローバル競争の観点から見る「人的資本経営」

・働く環境から見た「人的資本投資」

・リスキルの目指すべきもの〜デジタルリテラシーをどこまでどう「教育」すべきか〜

について、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員 田中 公康 氏、株式会社ザイマックス不動産総合研究所 主任研究員 石崎 真弓 氏と共にセッションを行いました。

▼本セミナーのアーカイブ動画はこちら
https://youtu.be/e2QwP4q1w8Y

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まず初めに、経済産業省片岸氏より、データから見る「人的資本経営に関する調査結果紹介」についてお話しいただきました。

昨年の9月に公表された「人材版伊藤レポート」。公表後の変化や新たな調査結果を元に作成される「人材版伊藤レポート2.0」について解説いただきました。

「人材版伊藤レポート2.0」について 経済産業省 経済産業政策局 産業人材課 片岸 雅啓 氏 

片岸氏:デジタル化や脱炭素コロナ禍におけるリモートワークでの働き方など、環境の変化が加速する中で、人的資本に関する課題が顕在化しています。

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片岸氏:海外では非財務情報に着目した情報開示が進んでおり、今後、人的資本についても議論が進んでいくことが想定されます。

国内でも、2021年6月にはコーポレートガバナンスコードが改訂され、例えば、人的資本に関して中核人材の多様性を確保すること、人材を育成していくための環境整備の方針について情報提供することも求められるようになりました

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片岸氏:2020年9月に公表した人材版伊藤レポートでは、人材戦略に関する3つの視点と5つの共通要素を抽出しました。

このフレームワークを元に企業の人的資本経営に関する取組の状況についてアンケート調査を実施しました。

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片岸氏:経営陣の方々にお伺いした結果、特に「投資対効果の把握」「動的な人材ポートフォリオ」「投資家との対話」などに関する取組について「進んでいない」という回答が多く得られました。「動的な人材ポートフォリオ」の構築は、確かに労働市場全体の問題もありますが、こうした点について実践に移していくことが求められています

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片岸氏:従業員の方にも現状についてお伺いすると、経営陣と同様、「動的な人材ポートフォリオ」について課題を感じており加えて、「リスキル・学び直し」や「エンゲージメント」についてもまだまだ力を入れる必要があるという感覚を持っている方が多いという結果でした。

こうした現状を踏まえて、企業が、人的資本経営を実践する際の具体的なアイデアを検討し、まとめたものが今回の人材版伊藤レポート2.0です。

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片岸氏:人材版伊藤レポート2.0のポイント4つご紹介します。

1つは、経営レベルで人的資本について責任を持って考える人を位置付けないといけないということ。

この責任者は経営トップから指示を受けてから取り組むのではなく、常に経営目線で人について考え、主体的に施策を実行していくことが大切です。

2つ目は、求める人材を明確にし、その人材を確保するための戦略を構築すること。その中で、新卒一括採用に限定されない、様々な入り口を設けた採用戦略を取り入れること。

3つ目はリスキル・学び直しの機会を提供するだけではなく、それを評価し、処遇や報酬につなげるような、良いサイクルが生まれる環境を構築すること。

4つ目は、社員の意思を尊重し、多様なキャリアや働き方を支援するということ。

大きくこれらの4つが今後の人的資本経営においては大切になっていきます。

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片岸氏:「人材版伊藤レポート2.0」の中身をかいつまんでご紹介します。まずは、経営戦略と人材戦略を連動させるための取組についてご紹介します。

CHROの設置が、十分に進んでいません。経営目線で人事について考える責任者を位置ることは、その企業が抱える人材に関する課題を抽出する第一歩になります。

人事部門が経営戦略に関与できていない企業も多い、CHROが果たす役割は重要です。

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片岸氏:経営戦略の実現を支えるのも人です。そのため、どんな人材ポートフォリオにしなければいけないか、いつ、どれ位の人が必要なのかなど、目標を立て、計画的に育成・採用を行っていくことが大切だと考えています。

そのためには現実と目標のギャップの明確化が重要です。いかに素早く人材を再配置獲得育成できるのか、ということを追求する必要があります。その中で、アルムナイネットワーク活用なども考えられます

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片岸氏:また、学生の採用選考戦略の面でも、学生が「この会社はどういうことができるのか」「キャリアパスが積めるのか」という点に興味を強く持ち始めている中で、自社ではこういった人材を求めている、そのためにこれほど多様な採用戦略をとっている、と示せることは大事な要素の一つです。

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片岸氏:また、リスキル・学び直しの機会を提供することも引き続き大事になってきます。あるアメリカの企業では、重要なスキルを持つ働き手や、学びに意欲的に取り組んだ働き手に対し、それに報いる報酬体系の導入や、社内インターンシップの機会提供をっています。リスキルの機会をただ提供しても、学ぶことのインセンティブにはなりづらいです。キャリアや報酬にも反映できるようにすることが、今後必要になっていきます。

今後、こうした人的資本経営の実践を、企業の経営陣が主導していくこととともに、社会全体でもそれを支える仕掛け作りなどを進めていくことが重要だと感じています。

トークセッション

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片岸氏からの人的資本経営に関する調査結果紹介のあとは、登壇者4名による人的資本経営に関するトークセッションを行いました。

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日比谷:まず、人的資本への投資を企業評価として市場が取り入れるという話ですが、日本と海外のキャップはいかがですか?

片岸氏:米国証券取引委員会が人的資本の開示を義務化する等グローバル展開している企業は既にその影響を受けるような状況です。日本企業もこうした動きに追いついていくことが必要になっていくと思います。

実際、働き手の獲得競争もボーダレスになっていくで、企業は人材に対してアトラクティブな環境を提供できるようになっていかなければいけません。

日比谷:では次に田中さんに質問です。非財務情報に人的資本に関する取り組みが組み込まれるということを踏まえて、企業から相談を受けることはありますか?

田中氏:そうですね、海外のグローバルな会社を見て、日本企業としてどうしなければいけないだろうか?という相談は増えています。特に海外の会社では人的資本の観点から情報開示を進めているので、日本企業もそれを考えざるを得ないのかなと思います。

働き手側から見ると、自社の取り組みによって、自身が働く上で適切な会社かを判断できるのは大きいのかなと思います。

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日比谷:次に、岸田政権になってから人に対する投資を促す政策方針が増えてきたと思うのですが、政府から見る人的資本経営の捉え方はいかがでしょうか?

片岸氏:人への投資は、成長と分配の好循環につながります。人に投資することでその人の付加価値が高まり、企業の業績にも繋がります。そして、そこから得られた成果を人にまた投資していくという好循環が生まれていくと思います。

資本市場からの評価も重要で、アメリカでは企業価値として人材や知財といった無形資産が高く評価されているのに対し、日本は有形資産の価値が評価されている、といったデータもあります。

今後は、無形資産の価値を大きく見せていくことが一つ重要な点になってくると思います。

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日比谷:では、人的資本経営は働き手から見るとどんな影響があるのでしょうか?

田中氏:自分たちの会社の取り組みや企業価値の高め方に共感できるかどうか、ということが働き手にとってこれから大事になってくるかなと思います。

また、働き手が会社を選ぶ一つの判断材料にもなり、会社にとってはいい意味でプレッシャーにもなりますが、一方で自分は良い会社 に勤めている、ということを実感できるきっかけにもなると思います。

片岸氏:働き手は、その会社が人的資本経営をしているのか、人材にどのように投資をしようと考えているかについてアンテナを立てておかないと納得感の高い働き方は出来なくなっていくと思います。また、その人のキャリアを考えた際に、「このスキルを習得すれば、この道が開ける」というような考え方ができれば、働き方の可能性はかなり広がるのではないかなと思います。

石崎:働く環境からの観点からも、企業が働き手に働く場を提供するだけという関係性からどんどん変わってきています。

何もしていないと企業から人が離れていってしまうリスクが高くなっていく中で、企業は環境整備による働きやすさだけでなく働きがいまで感じられるようにすることに注力していく必要があると思います。

一方で、働き手自身も、自分がいかに生産性を上げ、自律的に働くかということに意識を向けることが必要なっていくと思います。

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日比谷:最後に、働き方改革が始まってからの5年間を振り返って、大きく変わったと思うところがあれば教えて下さい。

田中氏:コロナ禍により強制的にリモートワークに切り替わり、多くの企業でこれまで越えられなかったハードルをクリアすることができました。それにより、一気に意識の変化が起こったことはやはり大きかったと思います。 また揺れ戻しが起こるとは思いますが、その中で多様性を大事にして一人一人がどう自律的にキャリアを作っていくのか、広い視野で見ていくことが働き方を変えていくことに繋がっていくのだと思います。

これからは、世界全体と自分のライフスタイルの両方を見ながら、どうやって生きていくのかが問われるようになっていくのだと思います。

片岸氏:働き方改革で労働時間の短縮が進み、コロナ禍では働く場所の柔軟化が一気に進みました。今後は、単位時間あたりの生産性を高めていくことについて、突き詰めていく必要があります。企業が人を使うというよりも、人が活きる組織にするためにはどうしたらいいのか、というのがこれから求められているところです。そのための人的資本経営の実践がこれから求められることだと思っています。

石崎氏:働き方自体も変わっていますが、一番大きく変わったのは働き手のマインドだとと思っています。自分で考えて自律的に働く、ということもそうですし、それをチームに求めるということも新しい課題であり、チャレンジだと思っています。また、積極的に課題にチャレンジしている企業のナレッジを共有して発信していくことの重要性も高まっていると感じています。

まとめ

今回は、人材版伊藤レポートを題材に、ワークスタイルやワークプレイスなど様々な視点からこれからの人的資本経営についてご意見をいただきました。

「人的資本」を中心とした経営、あるいは働き方は、これからの主流となっていくでしょう。

ぜひ企業の皆様は、今後の世の中の働き方の動向を追いながら、自社の課題と照らし合わせ、取り組んでみてください。